見晴らしのよい高台に建つ、北村土建さんの事務所。ご依頼をいただいたのは、いまから四年ほど前、森下友喜が二十八歳のときでした。
一幅の掛軸「南無阿弥陀佛」が生まれた背景には、ご家族を送るという、静かな祈りの時間がありました。
01ご縁のはじまり
森下とのご縁は、ご親戚を通じたつながりから始まりました。
以前、別の方に書をお願いしようとされたことがあったものの、それは叶わず――その心残りが、どこかに残っていたと言います。書家として歩みはじめていた森下のことを知り、「この人に」と声をかけてくださいました。
02おじいさまを送る
ちょうどその頃、おじいさまを亡くされ、仏壇を新しくお迎えになったところでした。
新しい仏間にふさわしい一幅を――。そうして森下が揮毫したのが、「南無阿弥陀佛」の掛軸です。
03「南無阿弥陀佛」に込めて
墨色ゆたかな六文字に、「友喜書」の署名と朱の落款。金地の表装に包まれたその書は、いまもご家族の仏間に静かに掛かり、手を合わせる方々を見守っています。
04撮影の日 ―― 物語のような家で
撮影に伺ったのは、まるで映画のセットのような、風格ある古い日本家屋。あちこちに手を入れながら大切に守り継がれてきたお住まいで、庭の緑や射し込む光が、掛軸の墨をいっそう深く見せてくれました。
高台に建つ事務所からの見晴らしのこと、この土地を切り拓いてこられた歩みのこと――。語ってくださるお話の一つひとつに、仕事とご家族への深い想いがにじんでいました。
